グランド・ブダペスト・ホテル 感想・ネタバレ

グランド・ブダペスト・ホテル

感想・ネタバレ

 

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思ったことを

とりとめなく書かせていただきますと、

 

この作品の根底をずっと流れていたのは「孤独」です。

 

ストーリーの中心である、

カリスマコンシェルジュのグスタヴと

新人ロビーボーイのゼロの

師弟の絆に目が行きがちですが、

筆者はあえて、2人の「孤独」について

この作品について考えてみようと思います。

 

作中で語られますが、

ロビーボーイのゼロは家族と故郷を失っており、

天涯孤独の身です。

 

そして、グスタヴもまた、

おそらくそれに近いのだと思います。

 

ゼロほど直接的に言及されていませんが、

作中では、

 

「彼(グスタフ)の世界は、

 彼が来るずっと前に消えていた」

 

とムスタファ(ゼロ)は語ります。

 

つまり、グスタヴもゼロと同じく、

天涯孤独の身の上だったんじゃないか、と。

 

 

そして、映画の最後の方ですが、

ムスタファはこうも語っています。

(上記のセリフも含めます)

 

「我々(ゼロとグスタヴ)は同じ仕事をした

 絆は必要ない」

 

「正直、彼の世界は彼が来るずっと前に消えてた

 とはいえ彼は見事に幻を維持して見せたよ」

 

このセリフは、

ジュード・ロウ演じる若き日の作家が

 

「ここが消えた世界との最後の絆?

 彼の世界との。」

 

とムスタファ(ゼロ)に質問したことによる回答のセリフです。

 

「ここ」とはもちろんグランド・ブタペスト・ホテルのことですが、

この問に対して、ムスタファは「違う」と答えるのです。

 

このホテルを残したのは亡き妻アガサのためであり、

自分とグスタヴの間に、絆なんて必要ないんだと。

 

このあたりの会話がこの物語を深く知るための

「鍵」になるのではないかと思うのです。

 

 

上記のセリフに「幻」と出てきますが、

これは、グスタヴの「カリスマコンシェルジュ」としての姿であり、

まるで絵本の世界のように美しい「グランド・ブタペスト・ホテル」

のことを指しているものでしょう。

 

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カリスマコンシェルジュのグスタヴは

従業員からは頼りにされ、客からは慕われ、

上客の多くは、グスタヴを目当てにこのホテルを訪れると

作中では語られています。

 

また、この作品の感想をネットで調べてみたのですが、

映像の美しさに触れている感想が多かったです。

 

筆者も同意見で、

見事な色彩で、美しい映像の作品だなと思いました。

 

ホテルもまるでお菓子の家みたいに、

幻想的で可愛らしいデザインです。

 

 

言ってしまえば、

「カリスマコンシェルジュ

「絵のように美しいホテル」

これがグスタヴの見せる幻なのです。

 

じゃあ、幻が解けた姿は?

 

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グスタヴは、夕食はいつも自室でとる

ということも同じく作中で語られますが、

その姿は、カリスマコンシェルジュ

という言葉とは結びつかないような、

哀愁ただようものです。

 

そして、グスタヴが去ったあとのホテルの姿もまた同様です。

 

 

色彩とは表面的なもの。

 

絵本のように美しい世界は、

「孤独」との裏返しのように感じます。

 

孤独を覆い隠すように、

美しい世界をお客様に見せているのです。

 

上客の多くはグスタヴが目的であり、

共通点は、

金持ち、老人、不安、虚栄心が強く、

軽薄、金髪、寂しがり屋

だっといいますが、

 

そういったホテルの客もまた「孤独」を抱え、

その孤独を忘れるために、

グスタヴの見せる「幻」を求めたのだろうな、と。

 

 

そして、ムスタファのいう「絆」についてです。

 

グスタヴとムスタファ(ゼロ)の間に

絆は必要ないと言ったのはなぜか?

 

もう一度上記のセリフを引用しますと

 

「我々(ゼロとグスタヴ)は同じ仕事をした

 絆は必要ない」

 

絆とは、人と人とをつなぐものです。

 

さらに、この映画でいうなら、

グスタヴとムスタファの過去の思い出との繋がりを保つものです。

 

彼らは共通して、

ロビーボーイとして下積みして、

カリスマコンシェルジュになりました。

 

孤独という「0/ゼロ」から始まって

同じものを見て、聞いて、感じて、

同じ景色を見るに至ったのです。

 

あえて言うなら、

2人は同じ孤独を抱えたまま、

と同時に、同じ世界にいるのです。

 

だから、世界を繋ぐ「絆」は必要なかったのです。

 

 

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